2.深谷奏一郎という男

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「長く知っているのに全く意識してなかったんだけどね。なぜこうなってしまったのか」  年上で知的で物静かな人が好きだとよく言っていたが。 「ああ、もう毎日会いたいし。交際0日婚とか同棲とか、めっちゃいいよねー」  照れた笑顔でそう言った。 「眞子がそういうこと言うのめずらしい」 「だよね、わかってる」  ほんとに良かった。私も嬉しいよ。 前の彼を忘れられず、泣いていた頃を知っているから。  眞子はいわゆる恋愛体質のようなタイプではない。あまり熱くならず冷静で、惚気たりもしない。彼氏は好きでもずっと一緒に居るのはなと愚痴っていたくらいで、こんなに可愛くなっている姿は見たことがない。  素敵なことだと思う。  彼氏ができたではなく、自分が変わってしまうくらい好きな人と出会えたことが。 「あの占い師、陽にもいろいろ言ってたね」 「ああ、私はね、好きな人じゃなくて婚活を始めることにしたんだよね」 「ええっ!?」 「えっ? なに」  そんなに、驚かなくても。  眞子はその大きな目を、こぼれるんじゃないかというくらい見開いて、驚愕している。  一華ちゃんに話したような話を一通り説明した。
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