2.深谷奏一郎という男

9/29
前へ
/254ページ
次へ
 三人でまったり盛り上がっていたら、突然別の島で話していた同僚から声をかけられた。 「──ねぇねぇ、渡会さんてたしか空手やってたよねぇ?」 「えっ? はい、趣味ですけど」 「深谷リーダーも、空手黒帯だって~。有段者だってー」 「えっ、ホントですか?」    なんか、似合う。 「どこでやってるの?」 「K町の、藤城道場です」 「あぁ、わかる。知ってる。そこ極真系でしょ?」 「えっ、じゃあ、藤城一華ってわかります?あ、でも年代が違うか」 「藤城一華? 聞いたことあるな。妹も空手やってたから、それで知ってるのかな」  さすが一華ちゃん。名が知れてる。 「えーー。なに渡会空手するの? 強い? もしや腹筋割れてる?」 「割れてるわけない。でも少し硬いよ」 「深谷リーダーが空手? 自分の話するなんて、めずらしいね」  桜井さんがこそこそと話し出す。 「え?」 「空手の有段者なんて初めて聞いたわ」 「そうなんですか?」 「そうだよ。プライベート謎だもん」 「へぇ」 「興味なさそうだね」 「いやそういうわけでは」  人気者の飯島は、いつの間にか隣の島へ。 「ほんと素晴らしいよ、うちのリーダーは」 「あぁ、それは本当に」  いかにもできる男って感じです。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8923人が本棚に入れています
本棚に追加