2.深谷奏一郎という男

11/29
前へ
/254ページ
次へ
「深谷さんて、彼の同期とか私の同期の間でも人気あったと思うんだけど、誰一人、近づくことができなかったっていう」 「え? そんなにですか??」 「好意をみせたとしても交わすの上手だし、告白すら瞬殺だって」  なんとなく想像できる……。そうか、桜井さんにとっては一つ上の先輩になるわけだ。 「たまに弁当持ってくるんだけど、見たことある?」 「いや、ないですね」 「手の込んだ弁当でさ、よくある、男弁当、みたいな感じじゃないわけ」 「料理上手の彼女ですか?」 「でしょ? そう思って、我慢できずに一度だけ聞いた事あるんだけど」 「聞いたら?」 「冷蔵庫の掃除に、自分で作ってるって」 「すご! モコミチじゃないですか」 「そうなんだよ。冷蔵庫の掃除って。料理好きな男って時々いるけどもさぁ」 「生活力高い感じですね」 「多分、家事とか得意そう。深谷さんを狙うような子って、浮ついていない本気の子ばっかりなんだよねー」 「なるほど、でも桜井さん、なんでそんな事知ってるんですか?」 「社内恋愛はしないってタイプなのかもね」 「へぇー」 「渡会ちゃんは?」 「えっ、私ですか? 私は深谷リーダーのことはなんとも……」 「いやいやちがくて。深谷さんの話じゃなくて、彼氏いるの~?って話よ」  え、恥ずかしい勘違い。  だって今の話の流れ。 「いないですけど」 「顔、真っ赤ですけど」
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8923人が本棚に入れています
本棚に追加