2.深谷奏一郎という男

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「桜井さーん渡会さーん、ドリンク注文しなくていいですかぁ~?」 「あーお願いします。私はジンバックを」 「私、生~。グラスで」  営業の皆さんとの会話は、とにかく話題が途切れない。間が持たないからなにか話題をなんて気を回す必要も無く。 「楽しかったな」  一人暮らしの自分の部屋に帰り、床に大の字に寝転ぶと思わず呟いた。  そして、帰りがけのやり取りを思い出していた。 「──さん?……渡会さん?」  は! やば、酔っぱらってる?  ボーッとしてた。 「は、はいはい」 「大丈夫ですか? 顔に全然出ないから、酔ってるかわからないですね。もしかして、かなり酔ってる?」 「すみません。大丈夫です。楽しくてつい、結構飲んじゃいましたけど、元気です」  そしてなぜかガッツポーズ。  だめだこりゃ。かーなり酔ってる。  話しかけてくれたのは、たまたま横にいた隙の無い男、深谷リーダーだった。
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