最終章・これからちょっと、遠くまで side F / side W

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「大丈夫。ちゃんと話すから。俺の今の気持ちを。お兄さんに認めてもらえないと、今後いろいろ大変そうだし」 「わ、わかってくれる!? 結構ややこしい兄なんです」  何かものすごく心配していたらしいが、陽の厄介事なんて、望むところである。 「それから、誕生日は仕切り直すからね」 「ええっ!? いいよ、十分だよ。嬉しい事いっぱいしてもらってるし」 「だめ。何日も前からプレッシャーかけられることはあっても、こんなん初めてだわ」 「は?」 「ん?」  あ、しまった。間違えた…… 「誰からプレッシャー掛けられたの?」 「いや、何でもないです……」 「あのさ、気が変わった。なにも要らないって言ったけど、やっぱり要ります」 「ああ、うん、それはもちろん。何が」 「今日誕生日だから、特別なことしてもらう! 今から一緒にお風呂入りたい。いいでしょ?」  相手などどこにもいないというのに、誰かに嫉妬して怒り出す陽が、可愛くてしょうがない。  一緒にお風呂って、それ、俺のご褒美でしかないんだけど。 「今日月曜日なんだけど、良いんですか?」 「え、月曜日? なにが?」  もっともっといろんな表情を見せてほしいと思う。寂しいなら寂しい、嬉しいなら嬉しいと声を大にして言ってほしい。伝えることを止めないでほしい。  でも最近の俺は、陽の心の変化に敏感で、細かいところまでは分からないけれど、 悲しんでいる、嬉しく思っている、困っている、そういう時にすぐ気づく事ができる。  それはおそらく、俺がいつも彼女を見ているからだ。  見ていればわかる。 声を聴けば、体温を感じることができれば。  いつも一番近い距離で、一緒に生きていきたい、心からそう思う。
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