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side 渡会陽
「深谷さん。……おーい」
「……」
「大人げないですよ? 奏一郎君」
「なに?」
あの日から私は、深谷さんの、奏一郎君の、彼女になった。
あまり実感はないけれど、この通りである。
お互いが今までのもどかしさを埋める様に、一緒に居る。
深谷リーダー、深谷さんと呼ばれることに不満があるらしく、ついには呼んでも知らんぷりという強硬手段に出た。下の名前で呼ばないと返事をしてくれない。
会社で見てきた深谷リーダーと違って、見ることができなかった素顔の彼を沢山見られるようになった。
幻滅? もちろんしない。
坂道を駆け上る勢いでますます好き、どの角度からどう見ても愛しくてしょうがない。
好きだという気持ちばかりが先行して、つき合った後のことなど全くイメージできていなかったことを思い知る。
これで大丈夫なのだろうか。
私の気持ちは駄々洩れだろうし、奏一郎君もなんだか私が思っていた以上に、想ってくれているような気がする。
**
「誰彼構わずそんなこと言うわけないよ」
「ただ経験したかったわけじゃなくて?」
「当たり前でしょ」
初回の翌日。
散々経験した気怠いベットの中で、いろいろ答え合わせをした。
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