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「最初から好きでいてくれた?」
「最初から好きだった。深谷さんの異動があって、会えなくなって気付いたけど、営業の頃からずっと気になってたと思う」
「じゃあそう言ってよ。あんな言い方じゃまったくわからない」
「だけど深谷さん、私の事なんて何とも思ってなかったでしょ? 最初に、好きですって言っても、受け入れなかったでしょ?」
「んー、まぁそうか……」
「でしょう? だからやっぱり、私の作戦勝ちだと思う」
「作戦……」
作戦とは言い難い。
あんな無謀なことは、今となってはもう、思い付きもしない。
「でもあの時すでに、身体がぞくっとしたからね。全く気のない相手なら、あんなに狼狽えなかったと思う。もう少し酔ってたら、危なかった……」
「私はそれでも良かったんですけど」
「いやー、酔ってなくて良かった。踏み留まって良かった」
結局あれがきっかけで何かが始まったんだろうし、この数か月間、お互いすれ違いながら、随分自分の気持ちと向き合う羽目になった。必然だったのだと思う。
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