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「その場にいた全員が、〝はぁ? 渡会さん? なんで?〟って思ったよね~」
「そうだよね。深谷リーダーも謎だけど、陽だってプライベート謎過ぎて、ミステリアス代表選手だもんねぇ」
「うん、そうそう」
「ミステリアスって……」
「で、そこに私が通りかかったわけですよ。たまたまですよ、たまたま。偶然話が聞こえちゃったもんだから」
「「えーっ!?」」
絶対面白がってるでしょ、八重嶋さん。
「おう、八重嶋さん、ちょうど噂してたんだよ」
「はい何ですか? 富永統括マネージャー。あ、深谷さん、……なに? 怖」
「お二人は、ただの同僚なの?」
「え? ただの同僚です。大学が同じだから、先輩後輩ですけど」
「そうなの? じゃあ皆さんが、根も葉もない噂を信じてただけってことか」
「あぁ、私と深谷さんが結婚するって話ですか? 勘弁してください。コーヒー吹いちゃいましたから」
「……」
「──でも、富永統括マネージャーの優秀な部下に手を出しているのは、事実です」
「ふうん、覚えておくよ」
「富永さん……」
*
「深谷さん、なんだよこの茶番、みたいな顔しちゃって面白かったー! 富永さんの前では、深谷さんもひよっこに見えるよね」
「やだ、その場に居たかった! っていうか陽はそんな時に何してたの? 総務部での出来事でしょ?」
「何してただろ、あ、大木室長のところに呼ばれてた。……だからこの2、3日、いろいろとおかしかったのか。桜井さんから、誤解して嫌な思いさせてごめんとか連絡来るし」
聞いてる人は聞いている。
新しい噂は、張本人の陽を飛び越えて伝わっていった。
難攻不落の深谷リーダーが落ちた。
あまりの潔さに、惚れてまうやろって話で。
今や私は、深谷リーダーから捕まってしまった、深谷氏最愛の人って事になっているらしい。
「陽さん、愛されてるねぇ」
「ヒューヒュー」
もう、どうとでも言っておくれ。
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