2.深谷奏一郎という男

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「いつもより酔っているみたいなので、今日はタクシーで帰ります」 「そのほうがいいですね」 「はい、でも大丈夫です!」 「……部屋に入って鍵かけるまで、正気を保ってくださいね」 「もし帰り道変な奴がいても、前蹴りで技ありとっちゃいますから!」  今度は思いっきり構えのポーズ。  ああやばい。誰かこの酔っ払いアホ丸出し状態を止めて。エヘヘ。 「アハハ、だからタクシーで帰るんでしょ? それにそんな変なやついたら、ちゃんと逃げて。危ないから」  えっ? 「あ、ちょうど空車のタクシー来ました」 「……」 「どうぞ?」 「……はい」  今、笑った?  笑われた?  び、びっくりしたー! 「……深谷リーダー、笑うと意外と人間っぽいな」  ぼんやりした頭を奮い立たせ、歯磨きをし化粧を落としシャワーを浴びる。  心地良い酔いは、すっかり覚めていた。
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