最終章・これからちょっと、遠くまで side F / side W

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***  数日後、奏一郎君と兄が初めて会った。  待ち合わせより早い時間に着いて、よりによって手をつないで、私が一方的にポーッと見惚れている時に、真後ろから登場した。 「おい」 「あっ。おに、お兄ちゃん!!」 「お前が人前で、手をつないでいちゃつくとはねぇ」  ニヤニヤして、ムッかつく。  自分だって由梨ちゃんを未だに溺愛して、手だって繋いでいるじゃないか! 「いいの! 私はずっとこういう事やってこなかったんだから」  顔面が、どんどん沸騰して真っ赤になっていくのがわかる。 「別に悪いとは言ってない」  恥ずかしくて取り乱す私とは対照的に、奏一郎君は、言わずもがな冷静。 「初めまして。深谷奏一郎です。陽さんと、おつき合いさせていただいています」 「初めまして。渡会浩己です。陽の兄です」 「……」 「なんだ、お前は。にやにやして」 「あなたに笑っているわけではありません」 「大丈夫ですか、深谷君、この人で」 「はい、大丈夫というか、陽さんでないと俺が困ります」 「ひとりで勘違いしてあれだけ泣いたくせに、どうなってるんだよ」 「その節は、大変ご迷惑を(陽)」  ひどい目にあった。と言って笑った。 「言っておきますけど、けして過保護なわけではないんです。この人が勝手に、都合よく調子よく俺に頼ってくるだけで。俺に気を遣う必要は全くないから」  やっと荷が下りたというか、今後はその役目は深谷くんお願いね、と余計なことを。 「お兄さんと会ってみて、三枝君が言っていた意味がわかりました」 「三枝君? 千諒くん? なんで?」 「たまたま、俺と陽さんの行きつけの店で会って、一緒に飲んだんです。二人で差し飲みみたいになっちゃって」
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