最終章・これからちょっと、遠くまで side F / side W

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 今日は、奏一郎君の車で遠出だ。  あれから何度か、送り迎えなどで助手席に乗せてもらう機会はあったけれど、こんな風に一緒にドライブに出かけるのは初めて。  私とつき合う前は、一人で気晴らしにいろんな場所に行っていたらしい。だから今日は私にとって、待望のドライブ日和。 「彼氏の車で遠出とか、これは、なかなかに良いね」  ままごとのように恋を、今を楽しんでいる私を、楽しそうに見ていてくれる。 「なにか、CDとか曲かける?」 「今時CDじゃないから」 「ああ、プレイヤーか、私のスマフォにも入ってる」 「飛ばして」 「何する? くるり? 『ハイウェイ』?」 「お。定番きた」  今日は、私の誕生日の仕切り直しらしい。  また、新しい春が始まる。 「ねぇ、そういえば私、年以内に恋愛結婚して、三人子どもを産むらしい」 「なにそれ」 「眞子と行った占いで」 「まぁ、子どもは授かり物だから、どうなるかわからないけど、大恋愛結婚ってところは、いいね」  大恋愛って。 「そっか。相手のお顔も見えてますよって言われた」 「間違いないでしょう」  何気ない、くだらない会話が続く。  まだ少し肌寒いけれど、晴天。気持ちよい風が窓から入ってくる。  信号待ち、運転の空いた左手を伸ばして、手をつないでくれた。
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