2.深谷奏一郎という男

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** 「……ええ、ですから、申請されていない残業が多すぎます。……ええ。そうですね。お伝え願えますか? ……え? 私がですか? いや私今、営業の仕事がありますから。……そうです。はい。そちらで対応してください。 ──お願いします」  多重業務過ぎる。 なんでこうも、なんでもかんでも私に仕事を回そうとするの。 何でも屋じゃないっつーの。 もやもやしながら内線を切る。 「あーもう!」 「フッ、」 「ふ、深谷リーダー、いらっしゃったんですね……」  わー、イヤなところを見られてしまった。 「渡会さん、何人分働いているんですか? もう昼になりましたよ?」  周りを見渡すと、ほとんどの人が昼休憩に入っていて、オフィス内には私と深谷リーダーしか残っていなかった。  なんでもかんでも仕事が回ってくる人が、ここにもいた。文句も言わずこなすんでしょうけど。 「すみません。オーバーワーク分は、総務の雑務なんです」 「総務の方は、渡会さんの労力がなくなったら相当大変になるのが想像できます。でも昼休みの時間を割いて仕事することないですよ、業務時間内に総務に確認しに行ってもらって大丈夫ですよ?」 「……すみません。明日からそうします」  最近毎日こうやって、昼休憩ぎりぎりにやり取りしているの、気付いていたんだ。
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