2.深谷奏一郎という男

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「いろいろ背負い込んでいるのはわかりますが、これを機に渡会さんが抜けても回るような体制を作った方がいいと思いますね」 「ええ、本当に。おっしゃる通りです」  人に任せるより自分でやった方が早いと、部下を育てるのも上司に頼るのも、後回しにしてきたせいだと思う。  私の一番苦手な部分だ。  お見通しなんだろうな。 「すみません。ご迷惑おかけして」 「いえ、渡会さんが来てくれて営業は大変助かってます」  仕事が出来る人からのお言葉、沁みる。  机上を整理し、昼食を買いに行こうと思ったところ 深谷リーダーがランチバックを広げ始めた。 「あっ」 「え?」 「深谷リーダー、今日お弁当なんですか?」  例の、お片づけ弁当だ。 「ご自分で?」 「ええ、自分で」  気になって覗き込む。  鶏肉とエリンギの炒め物?  オクラとアスパラとベーコン?  やたら綺麗な卵焼き、緑の入ってる。  ごはんと梅干、めっちゃ美味しそう! 「そんなたいそうな物入っていませんが」 「あ、ごめんなさい。つい! 人のお弁当を見るのが好きで、しゅ、趣味なんです」  恥ずかしい。ガン見しちゃってた!
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