2.深谷奏一郎という男

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「美味しそうですね」 「一人暮らしだと、野菜とか余っちゃうんだよね」 「自炊してるんですか?」 「外食か、基本は家ですね。買った惣菜とかはあまり食べる気にならないから」 「お忙しいでしょうに、すごいですね」 「一人分だけだし。すぐ作れるやつだから」  深谷リーダーは、仕事の時はカッチリ敬語なのに、仕事を離れるとそのカチッとした敬語が少しだけくずれる。  私はにやにやしながら、桜井さんに報告しなくてはと思った。  なぜかちょっと楽しくなり、わくわくしていた。 *** 「あの占いすごい。当たる。怖い」  今日は会社の同期、仲原 眞子(なかはら まこ)と、会社近くの定食屋で夕御飯を食べている。  例の占いを一緒に見てもらった友人で、仕事を通して知り合った。  何でも話せてまったく気取らなくていい。 お互い言いたい放題のではあるが、私にとってはそれがとても居心地が良い。  遅くなってごめんと、誕生日のプレゼントを渡される。 「彼氏!?」 「……そう。つき合い出して二週間くらいかな。びっくりだよね」 「え、あの占い師から、年下の男・灯台下暗し・今までと違うタイプ、とか言われてたよね?」 「そう、だから……」 「年下なんだ?」  眞子はこっくりと頷いた。 「良かったねぇ! どんな人なの?」 「弟の友人。昔から知ってる熊みたいな大きな人。体育会系でわりと賑やか」  たしかに、眞子が今までにつき合ってきたタイプとは全然違う。
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