2.深谷奏一郎という男

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「陽、わかってる? 結婚したら旦那としか恋愛できないんだよ?」 「どういう意味?」 「結婚てそんな、陽が考えてるような感じじゃないと思うわけ」 「でも、そもそも恋愛と結婚は違うっていうじゃない、婚活ってそういうもんじゃないの?」 「いやまぁ、そりゃそうだけど」 「ちゃんと働いていて堅実に生きている人、一緒にいても疲れない人。穏やかな人」 「まあそうね、それ大事。だけどさー、陽は好きな人との両思いの時期もなかったわけじゃない? だってその人と、できる?」 「できる?」 「子どもを作る、その時だけの行為ってわけじゃないんだよ? 夫婦生活っていうんだから」 「……ああ、そういう話か。それは、どうしたらいいんだろう? わからないけど、でも結婚するんだしなんとかなるでしょ。それも合う合わないとかあるの?」 「いやいやいや、」  私はいろいろと未経験だった。  忘れていたわけでないけど。 「好きな人と、結ばれたいよね」 「だからその、ってのが私にはハードルが高くて」 「でも前向きに、変わりたいっていう陽の気持ちは素敵だと思う、応援する! 大恋愛結婚して子供三人て言われてたしね」  大恋愛とは言われてないけどね。
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