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両親はいつも、私の意思を尊重してくれて、こうしろああしろと言われたことはない。信用されていることがありがたい。
けれど、本当のところどう思っているのだろう。帰ってきて欲しいのかな、地元に。
私自身〝このままでいいのか?〟という漠然とした思いが最近はどこかにあった。
「今のところ仕事辞める気はないし、私は当てにしないでいただいて」
『そうよね……。わかった、はい』
いつもと同じ会話いつもと同じやりとり。でもなぜか、いつもより歯切れが悪い。
『──あのねえ、陽ちゃん、あなた』
「なに?」
『一度聞いておきたかったのだけれど、結婚する気ないの?』
え?
「結婚? どうしたの突然」
『だって、お兄ちゃんの彼女は何度か紹介してもらったけど、あなたの相手は見たことがないから』
「え、あ、それもそうだね」
『子どもを産みたい気持ちがあるなら、そろそろ考えないといけない年齢じゃない?』
「子ども……」
『女性は男性と違って、妊娠出産の適齢期があるって話よ』
「どうしたの突然」
『そっちで誰かいないの?』
母から、私の結婚の話を振られたことなど一度もなかった。気にする事あったんだ?
「お相手はいませんけど」
『じゃあ、ぼちぼち考えたほうがいいわよ。陽ちゃんもいつまでも若くないんだから』
「えー」
『えーじゃなくて』
ほんと、どうしたんだろう。突然母は。
『あとあれね、味噌送っておいたから』
「ちょうど無くなりそうだった。ありがと」
『藤城さんの分も一緒に入れておいたわ』
「ああ、ありがとう 喜ぶよ」
ほんとは少し戸惑った。
聞かれて嫌だったからではない。
年齢的にはたしかに、焦らない私の方がおかしいのかもしれない。
恋愛や結婚から大分遠いところにいる私。
正直、あまり考えた事が無い。
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