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１．恋とか愛とか、わからないものはわからない
「渡会さんは、結婚のご予定は？」
最近、何気なく聞かれるこういう話題。人によっては無神経に聞こえるだろう。
「結婚ですか？ そうですねぇ──」
この日私は、営業社員の三浦さんと共に、取引先に来ていた。
契約書を取り交わし、クロージングの日である。契約後は担当者同士で細かい部分を詰めていく事になるだろうから、私がこの会社に出向くことはほとんどない。
＊＊
「──島田さんさっき、大分ショック受けてたみたいだね」
「え？ 何がですか？」
「さっき聞かれてたでしょ？ 島田さんに。結婚するような相手はいますか？ って」
「そんな聞き方されませんでしたよ」
「渡会さん〝もうすぐ結婚します〟みたいな言い方するから、がっかりしてたじゃん」
「いやいや、それ、三浦チーフの勘違いだと思います」
「渡会さん、島田さんずっとあんなに分かり易いのに、気付かないって事はないでしょ」
三浦チーフ曰く、取引先の担当者島田さんは、以前から私に対して好意を示しているのに何度も肩透かしを食わされているという。
「今日が最後のチャンスとばかりに意気込んで誘ってたけど、やっぱり全然何も伝わってない。隙がないですね、渡会さんは」
「いやいや」
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