都会のオアシス

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都会のオアシス

「えーっ!そんなにかかるんですか!?」 電話を切った俺は、途方に暮れた。 ある日、何の前触れもなくエアコンが壊れた。 季節は夏の盛り…毎日、生命の危険がある暑さだっていうのに、エアコンなしでどうやって生きろっていうんだ!? 早速、エアコンの修理を頼んだら、今混んでるから、修理に行けるのは早くても十日後だと言われて、俺はマジで死にたくなった。 (はぁ…暑くてたまらん!) せっかくシャワーを浴びても、すぐに汗がにじんで来る。 とても家にはいられない。 俺は、外へ飛び出した。 生ぬるい空気に息が詰まる。 それでも家の中よりはマシかと、あてもなく、俺は近所を彷徨う。 日本には『夕涼み』という言葉がある。 家の外に縁台なんか置いて、庭に打ち水して、夕方になって少し冷えた心地良い風に吹かれる…そんなイメージだ。 だけど、それはうんと昔の話。 もしくは自然に囲まれた田舎の話だな。 (暑い……) 滴る汗を手で拭う。 現代の都会の夏は、熱せられたアスファルトのせいで、夜になっても気温は下がらない。 結局、汗だくになって家に戻った。 これではいけない! こんなことでは、夏バテして倒れてしまう。 エアコンの修理にはあと十日かかるんだ。 その間、どうする? 少しでも涼しい場所…夏は、地面に近い程暑いと言うから、高い所だ。 高い所…そして、冷たいもの…水分補給… (あっ!そうだ!) * 「うまいっ!」 次の日、俺は会社の近くのビアガーデンに向かった。 酒はそう強くはないけれど、屋上で飲むビールは意外な程、うまかった。 ビルの屋上だからか、確かに地上よりは涼しい気もするし、帰ったらビールのおかげで暑いのもわからずに爆睡してしまう。 俺はこの作戦でなんとか十日間を乗り切った。 現代の夕涼みスポット、ビアガーデンよ、ありがとう!
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