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「何だ、妬いてくれないのか…
まあいい。
トーコ、俺には時間がないんだ。早くしてくれないと、会社に遅刻してしまう。
支社長の俺が、始業開始の『朝の社訓復唱』に遅れてみろ。
社員に顔向け出来ないぞ」
「会社の人、喜びそうな気もしますけどね」
「トーコは、何がイヤなんだ？
もしかして…俺が嫌いなのか」
彼は、いかにも切なげに私を見た。
うう、追い込まれてしまった。
こうなると、絶対に言いたくなかった恥ずかしい理由を、告げざるを得ない。
私はモジモジと俯いた。
「だってぇ、アナタ……舌、入れるでしょ？」
「は？何を言ってるんだ、君は」
「あの私！朝からそういうの、困るんです！小一時間ほどフリーズしてしまって、家事が全く出来ないのっ」
は、恥ずかしいっ。
顔を両手で覆いつつ、全身でイヤイヤをする私に、彼は深いため息をついた。
「はあ…
いいか？トーコ。
この俺が、朝から本当にそんな非常識な事をすると思うのか？」
彼は眉をしかめると、嫌悪を露にした。
え…
「全く何を考えてるんだか。
純情だと思ってた赤野(←トーコの旧姓)が、そんな事を考えていたなんて、知らなかったよ。
…ショックだ」
え、え…
「…俺は、奥さんを選び間違えたのかも知れない。ヒトを勝手に誤解して、そんなフシダラな事を平気で言うなんて…」
そ、そんなぁ～っ！！
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