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ノースリーブの袖の中に、彼はそおっと指先を忍ばせた。
私はすかさず、その手首を掴む。
「ちょっと待った!
…あの、まだ午前中ですが…」
「確かに。全く、困った奥さんだよ」
「あ…や…」
またしても、
してやられた。
私の制止は全く効力を示さなかった。
彼の細長いは、素肌の上を滑るように、胸の曲線を撫でてゆく……
さっきまでの“擽ったい”が、彼の言うところの“気持ちよい”に変わってゆく中で、私はボンヤリと考える。
…にしても彼、さっきまで何の本を読んでたんだろう。
さっきの会話と、何か関係あるのかな。
結局、彼の疑問は、さっきので解決したのかしら。
あんまり関係
まさか……
ただ単にワタクシめとスキンシップを諮りたかっただけなんじゃあ…
ないよ、ね。
そろそろ昼に差し掛かろうとする時刻。
コーヒーの芳香漂うリビングで、延々と愛を証してくれる、5歳年上のお兄さん。
身も心も融かすような、彼の『愛の証明』に身を委ねながら、私はぼんやりと考えた。
あーあ、
私はこれから、こんなふうに彼のペースに慣らされていくの…か…なぁ……
(C おわり)
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