D ヨルノセイカツ

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その日も夜遅く、(やつ)た顔でアキトさんは帰ってきた。 フーっと息を吐きながら、ネクタイを弛めてテーブルにつく。 おいたわしや…… いつもツヤツヤの美肌のキメが崩れ、唇もカサカサしている。 私はまず、あらかじめ用意しておいた、ローヤルゼリータップリ配合の特製栄養ドリンクを差し出した。 「お、どうしたの、コレ」 彼は黄色く蛍光がかった液体を、胡散臭げに見つめている。 「ハイ、精気を養って貰おうと」 私はモジモジとテレながら彼に告げた。  「ふーん」 暫くそれを眺めた後に、彼は一気に飲み干した。 「お、キくねえ」 「そう言って頂けますと」 次に、彼の前に準備しておいた夕食をセットする。 彼はどんなに遅くなっても夕食は家で摂る。これも多分、トーコへの『愛』だと思う。 「…なんだかエライ豪勢だね」 「ハイ。メインには浜名湖産鰻のお重を、サブには鳥取県産の長芋を短冊切りにした小鉢を用意しております。 “滋養”になるかと思いまして……」 「そ、そう」 彼は一瞬怯んだが、やがて黙ってそれを掻き込み始めた。 フフフ… これもひとえに愛するアナタ様のため。 トーコの主婦業へのモチベーションは、ハンパないのだ!
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