竜と少女

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チサは不幸な生い立ちの娘だった。 五つの時、両親を流行り病で亡くした。 その時引き取ってくれた祖母も、チサが七つの時に老齢ゆえか風邪をこじらせ、肺を病んで亡くなった。 その後は、いろいろなところを転々とすることになった。 最初は父方の叔父の家。子どもが多い家だったために、余計な食い扶持が増えたと厄介者扱いされた。 次は父方の叔母の家。親切にしてくれたが、これまた子どもが多く養ってやれぬと言われてしまった。 そのかわりにと叔母が住み込める奉公先を見つけてきたのだが、これがまた『大ハズレ』だった。周りには全く覚らせなかったのだが、その店の主人は莫大な借金を抱えており、いきなり夜逃げしたのである。 路頭に迷ったチサに、叔母が助け舟を出してくれた。また奉公先を見つけてきてくれたのである。だが娘ひとりをいきなり、しかも住み込みで雇ってくれるところはあまりなかったらしく、臨時雇いの仕事だった。 その後チサの就く職はたいがい臨時雇いで、その都度住む場所も変わった。国中を流れ流れて十七の歳までを生きてきたのである。
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