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……いつもそなたはそう言うな。
何故、そう己を卑下する?
……まぁ、ヒトの体が不便でないと言えば嘘になる。それだけでなく、そなたと添いたいと言った時、力の大部分は封じられてしまった。我が主神によってな。だが私はそんなことは些末な事だと思えるほど、そなたに惚れているのだ。
……わけはさんざん話したろう?神の御使いと敬い畏れるあまり、同族同士の争いに敗れて深手を負い地に落ちた私を、ヒトは遠巻きに見ているばかりだった。
だがそなたは勇気を振り絞って私に近づき、傷の手当をしてくれた。――とても見ていられなかった、ただそれだけ、か……。しかしあの時、私は本当に助けられたのだよ。そなたはまさしく命の恩人だ。ましてそれが可愛らしい娘ならば、惚れずにいられようか、ふふふ。
……なんだ、どうした!? なぜ泣く? ここは照れるところだと思うが……いやすまぬ、なにか気に触ったか!?
…………全く。そなたは、本当に難儀な女だな。幸せが、恐ろしいと。己は本当にこれでよいのかと、怖くなると。――良いのだ。そなたは優しい、よい娘だ。幸せになって、なにが悪い。今まで不幸だった者は、これからもそうであらねばならぬ、などという法は、神界にもないぞ。
……まだ言うか。おのれ、一番口にしてほしくないことを。……そうだな。ヒトの身たるそなたは、あと数十年しか生きられぬ。それでこちらは千年の長き時を生きる竜族だ。必ずそなたが先に逝ってしまうな、きっと。
――それでも、そなたとともに居たい。
天地の間にある全ての物には、いつか終わりが来る。しかし、だからといってなにも愛さない、慈しまない、ということはないだろう?
――なぁ。そなたを、そなたの終わりまで愛させてくれ。
他の何者でもなく、私自身が、こう思っているのだ。
どうか私の望みを、叶えてはくれまいか。
私と、夫婦になってくれ。
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