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朝、レースカーテンから陽が差す中で 私はゆっくり目覚めた。
視界にかかるモヤが晴れると 私を見つめている人が 額に優しいキスをした。
誰だったっけ…
えっと、確か……
「 亜湖、おはよ 」
私は その声に微笑んだ。
あたたかな温もりに包まれながら昨晩の事を思い出す。
もうすぐ高校3年になる私、西原 亜湖。
それは昨日の夜のこと。
一人、街中を歩きながら 頭の中で繰り返される言葉。
「 ごめんね… ママ、もう限界なの、ごめんね… 」
泣きながら私に言ったのは、ママ。
私の家庭はどちらかと言えば裕福、両親と私の三人家族。
パパは不動産会社社長、ママは看護婦。
普段から鍵っ子で一人が多かったが、慣れてしまえば寂しくはない。
でも、それは偽り。
パパは優しい人で大好き、でも…ママをずっと裏切ってた。
忙しい両親でも、私は好きだった。
なのに、私の前からパパだけがいなくなってしまった。
いつも一人でいる広い家がまた広くなった。
寂しさをまぎらわしたいのか、ママは私の春休みの間だけ 救命担当ナースとなった。
顔に涙はない、でも心がグズッていた。
誰か、私を助けて……
金曜の夜は人で溢れている。
そんな交差点で私は一人でただ、立ち尽くし行き交う人、私を通り過ぎていくのを見ていた。
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