番外編:酔っ払いの彼女

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番外編:酔っ払いの彼女

ある寒い週末。 その日お姉さんは、職場の飲み会で出かけていた。 「一次会だけで帰ってくるし、次の日は休みだよ。」 「分かった。なら、終わる時間が分かったら教えて?迎えに行く。そのまま俺ん家でお泊まりしよ。」 昨日の電話で約束した通り、20時過ぎに入った彼女からの連絡で、俺は最寄り駅まで迎えに行く。 もうすぐ彼女に会えると思うと、自然と足取りも軽かった。 駅の改札がよく見える所に立ち、耳にイヤホンを装着する。 逆ナン防止だ。 彼女と付き合いだしてからも、待ち合わせ場所で待っていると、逆ナンされることがたまにある。 一々断るために会話するのも煩わしいし、少しでも彼女に誤解を与えたくない俺は、試行錯誤した結果、この方法に落ち着いた。 さすがにイヤホンをしていたら、話しかけられても聞こえないふりが出来るし、諦めてくれる。 今現在も、チラチラと視線をよこす女が居る事に気付いているが、無視を決め込む。 ちょっと前の俺なら、声をかけに行っていただろうに、あまりの変化に自分でも少し笑える。 しばらく待っていると、改札に待ちわびた人が見えた。 彼女も俺に気付いたのか、笑顔で駆け寄ってくる。 その姿がもう、滅茶苦茶可愛い。 もう少しで彼女が辿り着くというタイミングで、俺はイヤホンを外した。 「ごめんね、待った?」 「ううん、全然。」 俺は、見せつけるように満面の笑みで彼女を抱きしめて、少し冷えているおでこにキスを落とす。 途端に、彼女が耳まで真っ赤になるから、俺は思わず笑ってしまう。 「何でこれぐらいで照れてるの?」 「だって、こんな沢山人が居るところでそんな事するから…!」 「ーーこれ以上に恥ずかしい事、二人の時にいっぱいしてるでしょ。」 耳元で囁くと、真っ赤な顔で睨まれるけど、全然怖くない。 むしろ可愛すぎて、ここで今すぐ色々いたずらしたくなるが、それは本気で怒らせそうなので我慢だ。 「とりあえず、帰ろっか。」 「あ、ねえ。お酒買って帰らない?」 「お酒?飲みたいの?」 「うん…ちょっと飲み足りなくて。でも、外で飲みなおす気分でもないし、お家ならまったり飲めるから、いいかなって。」 「俺は別にいいけど。じゃあ、コンビニ寄ってく?」 「うん!」 帰り道にあるコンビニで、数本のお酒とおつまみを買って帰った俺達は、そのまま寝てもいいように、先に風呂に入った。 「一緒に入りたかったのに。」 「一緒に入ったらエッチなことするくせに。」 「そりゃそうでしょ。しない方がおかしい。」 お酒が既に入っている彼女に、短時間で済ませたいからと、一緒にお風呂に入るのを拒否された。 ちょっとしょんぼりしてしまったのは仕方がないと思って欲しい。 大好きな恋人には、いつだって触れていたい。 「さてと、準備出来たし、乾杯しよっか。」 「そうだね。じゃあ、乾杯。」 「乾杯。」 缶チューハイで乾杯した俺達は、他愛もないことを話した。 次のデートはどこに行こうか、とか、見たい映画の話とか、行きたい旅行先とか、友達のバカやった話とか。 くだらないことも沢山話している内に、結構買ってきていたはずのお酒が、ほとんど空になっていた。 (あ~、ちょっと飲み過ぎたかな。彼女も完全に酔ってるな、こりゃ。) 目の前に居る恋人は、顔をほんのり染めて、ふにゃっとした表情をしている。 こんな姿を男の前で見せたら、喰ってくださいと言っているようなものだ。 (明日、絶対に俺の前以外でお酒を飲み過ぎないように言い聞かせよう。) 俺がそう決心していると、彼女が突然、俺の膝の上に跨ってきた。 「ふふっ、だーい好き。」 おでこをグリグリと俺の胸元に擦り付ける。 いつにない彼女の甘え方に、俺は一瞬にして体が火照った。 「っ!ちょ、酔ってるだろっ。」 「酔ってないよ?ふわふわ気持ち良いけど、酔ってない。」 「酔ってる人は、大体皆酔ってないって言うんだよ。」 「酔ってませんっ。」 う~、と唸り声をあげ、ぎゅうっと抱き着いてくる彼女を受け止めながら、どうしたもんかと思案する。 正直、俺の下半身は、もう完全に反応している。 (でも、酔ってる彼女に手を出すのは…恐らく覚えてないだろうし、折角愛し合うのに、覚えてないとか嫌だ。) とりあえず、今晩はこのまま寝かそうと決めた俺は、彼女にベッドで寝ることを提案するが、何故か拒否された。 「何で?ほら、ベッドに行って一緒に寝よ。」 「いーや!」 先程よりも、更にきつく抱きしめられた俺は、そのまま彼女を抱き上げて強制連行しようとするが、あえなく失敗する。 しかも。なぜか。 押し倒される形になっていた。 抱き着いたままの彼女が、モゾモゾと動き始めたと思ったら、素肌に触れる冷たい皮膚の感触。 思わず見ると、彼女の手が、ズボンの中に入り込んでいた。 「ちょ、何してんの?!」 「だって、ここ元気だよ?」 「そういうことじゃなくて!」 俺の制止も聞かずに、彼女は俺の反応しきっているモノに下着の上から触れた。 ピクッと反応してしまったモノを、ゆるゆると擦られ、もどかしい快感を感じてしまう。 「大きくなってる…」 嬉しそうに笑った彼女は、直接触れようと、下着の中に侵入してきた。 「ちょ、本当待って!」 「いーや。今日は私がするの。」 そういって、俺の熱いモノを握りこんだ彼女は、ゆるゆると上下に扱き始める。 「ちょっ…!待てって⋯!ふっ⋯くっ」 彼女の手の気持ち良さに、背筋に快感が走った。 実は俺は、女に自分のモノに対する行為をさせた事が無い。 ナンパに着いてくるような女は、大抵他でも遊んでることが多くて、どんな病気を持っているか分からないからだ。 ナンパした女に口でしてもらった後、性病を遷された、なんて話も聞いたことがある。 俺自身も、女の秘所に直接口で触れた事はない。感じさせるのは指で十分だったし、キスも軽くだけで、ゴムもちゃんと付けていた。 お互い安全に気持ち良くなるのが、俺のナンパした女とヤル時のポリシーだった。 今思えば、そうまでして遊ぶ必要あったのか、と思わなくもないが。 あの時は、後腐れなく性欲を発散することしか考えてなかったからな。 そんな俺も、彼女と付き合い始めてからは、もちろん深いキスだってするし、彼女のを舐めて可愛がることも多い。 だけど、俺のをされるのは、今まで無かった。 してほしくなかったわけじゃないけど、強請ることでもないと思っていたから。 それを今、彼女の方からされている。 それはとても嬉しい。しかも滅茶苦茶気持ちいい。 先端からヌルヌルとした液体が出てきているのが、自分でも分かる。 「気持ちいい?ヌルヌル一杯出て来たね。」 「くっ…気持ちいい…気持ち良いけどっ…」 「けど…?」 少し握る力が強くなり、扱くのも早くなったのが分かった。 「はっ…ちょ、本当無理…我慢できないっ…」 「まだだーめ。」 ニコッと笑った彼女は、俺のズボンを下着ごとずり降ろすと、何の躊躇もなくそこをパクッと咥えた。 「くぁっ…」 秘所とは違う温かさと気持ち良さに、思わず仰け反る。 俺の反応を見ながら、彼女は頭を上下に動かしていた。 「あ…くっ…ね、もうダメ。本当に出ちゃうからっ。」 その言葉にも、彼女は口を離さない。 「本当ダメだって!そんなしたら…ああっ!くっ…」 思い切り吸い付かれた瞬間、俺はあっけなく彼女の口内で果てた。 満足そうに口を離した彼女に、慌ててティッシュを渡したのに、ゴクンと飲み込んでしまう。 「気持ち良かった?」 「気持ち良くないわけないだろ!こんなことされたら、止まらなくなるよ。」 「止まらなくていいよ?…シよ?」 彼女の言葉に、俺は一瞬そのまま組み敷きそうになる。 「だめ。今はしない。」 「何で…?」 「だって、酔ってるでしょ?今したら、お姉さん絶対覚えてない。俺は、全部覚えててほしいんだ。だから」 「そんなことない!」 少し怒ったように俺を見つめる彼女に動揺する。 「忘れるわけないよ。だって、大好きな人とのことだもん。」 「でも」 「正体無くすほど酔ってるわけじゃないよ。ちゃんとしっかりしてる。」 「じゃあ、何でさっきあんなこと…」 普段の彼女からは、考えられない程大胆な行動は、酔ってるからとしか思えなかった。 「…君と付き合うようになってから、私ずっと思ってた。いつも君にしてもらってばかりで、いいのかって。」 言うべきか、迷うそぶりを見せながらも、彼女は少しづつ話してくれた。 俺が、過去にナンパばかりして遊んでいたことで、受け身だと飽きられてしまうんじゃないかと思っていたこと。 あまり経験がないから、なかなか積極的になれなかったこと。 今日の飲み会で、酔って積極的にアプローチしてる同僚を見て、お酒の力を借りれば大胆なことも出来るかもしれないと思ったこと。 話ながら、段々と泣きそうになる彼女を見て、本気で自分に苛立った。 俺のバカな過去のせいで、彼女がそんなことを悩んでいたなんて知らなかった。 「嬉しかったよ。お姉さんにしてもらって。でも、俺は別に、お姉さんが受け身だからって、飽きたりなんかしない。言ったじゃん。俺は、絶対にお姉さんのこと離さないって。」 「でも…」 「俺はさ、単純に、お姉さんに触れるのが嬉しいんだ。俺が触れて、お姉さんが感じてくれて、気持ち良くなってくれて…それがたまらなく嬉しいし、愛しいって思ってる。だから、それで満足なんだ。無理して積極的になる必要はないんだよ。…俺のせいで、悩ませてごめんね。」 首をフルフル振りながら、俺にぎゅって抱き着いてくる彼女を思いっきり抱きしめる。 「それに…お姉さんの可愛い顔見てるだけで、俺は十分気持ちいい。」 耳元でそう言ってあげると、涙目のまま見上げられる。 「ばかっ…」 「はぁ…その顔も可愛くてたまんない。ね、やっぱりシよっか。お姉さんが酔ってないって言うんなら、いいよね?今俺、めちゃくちゃお姉さんと愛し合いたい。」 「ん…いっぱいしよ…」 そのままお姉さんを抱き上げて、ベッドに二人一緒に沈み込む。 「さっきお姉さんに一回イかされちゃったから、たっぷりお返ししてあげる。」 ちゅっ、と唇に触れる。 触れただけのキスが、すぐに舌を絡めた激しい交わりになる。 お互いの熱と思いを交わした俺達が眠りについたのは、もう夜が明ける頃だったーーー。 ********************* <あとがき> ということで、番外編でしたが、いかがでしたか? 付き合い始めて割とすぐって感じの二人です。 お姉さんは、あまり経験値が無い(という設定)ので、元ナンパ師である彼と付き合うと、いつかはそういう考えに陥るのではないかなー、と思った次第です。 本当は、お酒の力で積極的に彼を翻弄するお姉さんを書きたかったんですが、結局最後、彼に攻められてる気がするのは何故だ…また、お姉さん優位の話、リベンジしたいと思います。年下君をもっと翻弄したい。 ナンパ君の純愛本編を投稿してから、沢山の方に読んでいただき、沢山のブクマやスターに、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。 一時、短編ランキングの1位になっていた時は、我が目を疑うほど驚きました。 そして、ページコメントいただいた方もありがとうございます。 続編を、と言っていただけて、本当に嬉しかったです。 続編をどのような形にしようかな、と現在考えていて、ゆっくりとにはなるかもしれませんが、二人の今後をお待ちいただけるとありがたいです。 二人の呼称も、どうするか迷っているのですが、”お姉さん”と”きみ”のままにしようかな、と思っています。 決して名前を考えるのが面倒とかそんな理由じゃないと言い張りたい… また、番外編も投稿したいと思います。 あとがきが長くなりましたが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。 ******************** 「それにしても、いくらお酒の力があったにしても、やけに大胆だったよね?手だけじゃなくて、口でもしてくれたし。」 「だって…君の感じてる顔が可愛すぎて、止まらなくなったんだもん…」 「っ!お願いだから、今すぐ忘れて!!」
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