妻を探して

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「妻を探して欲しい。所で、あんた誰?」  いきなりそう声を掛けて来たのはパジャマ姿の老人である。  関わり合いにはなりたくないと、俺は他の人々同様に聞こえなかった振りをしようか迷った。  しかし、通り過ぎ振り返ると辺りをオロオロと歩き回り誰も老人に関わろうとしない。  俺だって忙しのだ。仕事も決まらず就職活動を続け周りが次々に内定をもらう中、一人取り残されたような気がしていた。 「探してやるよ。所でどこの老人ホームから抜け出して来たんだ?」  話した感じと見た目から、老人は痴呆を患っていると思われそう声を掛けたが、何の事か解らないのか頭を捻っていた。 「喉渇いた。ジュース買ってくれよしふみ」
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