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「かわいそうにね。まだ、4才でしょ?」
「かわいい盛りだったでしょうに………」
黒い服に身を包んだ参列者たちが、式場に入る前に、口々に感傷の言葉を口にした。
今日の式場は、中も外も、マスコミを含め、大勢の参列者でごった返した現場だった。
こんな大人数が参加する式は、俺にとっても初めてのことで、現場を仕切るので、珍しく必死になっていた。
「こちらからお入りください」
「マスコミの方はあちらへ………」
担当者たちが、各々の席に誘導しながら、式の準備を進めていく。
今回の式の主役は、4才になったばかりの小さな女の子だった。
父親と一緒に信号待ちをしていたとき、運転操作を過った車に跳ねられ、突然、幼い命がこの世から奪い去られた。
それは、高齢ドライバーによる痛ましい事故だった。
最近、この手の話が話題になることも多く、今回の少女の事故は、マスコミにも取り上げられ、式場にまで取材にくる事態となっていた。
慣れない対応に追われながら、なんとか各自持ち場に着くと、司会の挨拶と共に、ざわついていた場内は静かになり、厳かに式は始まった。
深く滑らかな読経と、ポクポクと鳴る木魚の音が響く中、まだ小さな命の落命を痛み、誰かが鼻を啜るのを合図に、次々と悲しみの涙が連鎖した。
いつの間にか、マスコミを含め、誰もが涙し、会場が悲しみに包まれていった。
会場にいる全ての人が咽び泣く中、式も滞りなく終わり、後は出棺を待つのみとなった。
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