晴天

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そんな思いをどこにしまっておいたのかというほど、話はいくらでもできた。 「がんばったね」と皆に言われれば嬉しくて泣いた。「幼馴染には勝てないだろ」と言った前田さんには、おしぼりを投げつけてやった。 お開きになり、店を出たときには言うだけ言って晴れ晴れした気分になっていた。夜風が気持ちよかった。 「そういえば、店長て来なかったですね」と横澤さんに尋ねると意外な顔をされた。 「ん? 来ないよ?」 「あれ? 私はてっきり来るのもかと」 「どうして?」 「だって前田さんが、今日の飲み会は店長の命令だから、って……」 「そんなこと言って誘ったの? 子どもみたいね」と横澤さんは笑い出した。 次の日の朝起きると、とてつもない羞恥心に襲われた。 大して飲んだわけではなかったので記憶ははっきりしていた。酔ったからといって全てぶちまけてしまったことを後悔した。 恐る恐るお店に行ったが、皆何食わぬ顔で「お疲れ様でーす。昨日はありがとうございました」と言っていて、拍子抜けした。 ただ、横澤さんに「前田君に謝っておいてね」とは釘を刺されたが。 顔に当たってたもんな……。 気まずいながらもきちんとしておこう、と思っていると、お手洗いの前でばったり出くわした。 「あのっ、……昨日はすみませんでした……」と言うと、立ち止まってこちらを見た。 「……別に気にしてないから」 そう言った前田さんは、いつもの前田さんだった。 そのまま無言でジッと見つめられる。 「……なんでしょうか」 「マシな顔になったな」 ぶっきらぼうに言い放つとパッと後ろを向いて行ってしまった。 「……」 人を見る目は相変わらずだったが、その眼差しが以前より柔らかくなったような気がして、私は少し親近感を持ったのだった。 ……帰ったらネックレスは捨てよう。 もうミスはしなかった。
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