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車内に備え付けられているデジタル時計は、「16時8分」と表示されていた。
「摩周湖まで、どれくらいで着くって感じなんですか?」
私が尋ねると、ハジメさんからは
「うーん、二時間もかからないんじゃないかな?
もちろん、どの展望台にリュウヤ君がいるかで、話は変わってくるけどね」
という答えが返ってきた。
「展望台?」
「摩周湖って展望台が一つだけじゃなくて、複数あるんだよ。
第一展望台、第三展望台、裏摩周展望台、とね。
さすがに裏摩周だと、少し時間がかかるけどね」
「じゃあ、その展望台のどれかにリュウヤはいるんですね!」
「リュウヤ君が、ずっと摩周湖にとどまっていてくれたら、の話だけどね」
摩周湖で待ち受けているモノが、無情な現実である可能性も否定出来ない為、ハジメさんは落ち着き払った声で高まる私のテンションを抑えにかかる。
「ところでさ、めぐみちゃん
あの摩周湖のLINEから、リュウヤ君から何かLINEは来た?」
「……ありません」
待ち望んでいる未来から現実に立ち返った私は、弱々しく首を振った。
摩周湖の画像のLINE以降、リュウヤからLINEが送られてくる事は無かった。
『さっきの画像、摩周湖よね?
アンタ、もしかして摩周湖にいるの?』
はやる気持ちを抑え切れない私は、摩周湖に向かっている最中、二通三通と続けてリュウヤにLINEを送った。
けど、リュウヤからLINEが送られてくる事はなく、しまいにはハジメさんに
「そんな連発でLINE送ったら、逆に頑なになって、何も返信してこない可能性があるよ」
と、たしなめられる始末であった。
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