・摩周湖へ

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夕映えに彩られた摩周湖は、ハジメさんの言った通り素晴らしい景色だった。 時間帯がよかったのか、「霧の摩周湖」と歌われている程の霧は出ておらず、徐々に真っ赤になっていく太陽と摩周岳を、湖面は鮮やかに写し出していた。 「キレイ……」 その絶景とも言える景色は、高まりきった私の心を幾分かではあるが静めてくれる。 やがて、車が止まった。 「ココが、摩周湖第一展望台だよ」 ハジメさんは言うと、車から降りる。 その言葉に頷き、私も車から降りると、私とハジメさんの二人はすぐさま立花センパイの姿を捜した。 けど、やっぱりというか、立花センパイの姿は見当たらず、摩周湖をバックに写真を撮っている観光客に聞き込みをしても「ナシのつぶて」であり、失望感が私達二人を襲った。 「まっ、展望台はココだけじゃないしね。 そんな、落ち込まなくてもいいと思うよ。 リュウヤ君が、摩周湖にいたのは確実なんだしさ」 ハジメさんは笑って、私を慰めてくれる。 けど、私の落胆は想像以上に大きく、「はぁ」と気のない返事をするのがやっとであった。
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