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日暮れが押し迫ってきた。
空は夕闇から徐々に暗闇に様変わりしていき、その薄暗さはまるで私の心を表しているかのようだった。
「第三展望台に行ってみる?
LINEの画像の感じからしても、どうも第一展望台から撮ったような感じじゃなさそうだしね」
乗ってきたアストンマーティンに目をやりながら、ハジメさんが私に尋ねる。
「……はい」
私は頷くと、先を歩くハジメさんの後を重い足取りで付いていった。
──ドコにいるの、立花センパイ?
私は天を仰いだ。
あの、ガイドブックのドッグイヤーらしき跡にいち早く気付く事が出来なかった自分の鈍さを、私は激しく呪った。
もしその事に気付いていれば、立花センパイより先回りして摩周湖に来る事が出来たのに。
後悔が私を襲うが、もちろん分かっている。
嘆いてもしょうがないし、仮に先回りして摩周湖に行ったとしても、立花センパイと会えるという保証はドコにも無いのだ。
けど、センパイと会えなかったその失望感から、私は嘆かずにはいられなかったのだ。
そして、私の憂鬱がハジメさんにも伝播したのか。
第三展望台に向かう車の中、ハジメさんは釧路から摩周湖へ向かう時と同じく、重苦しい表情をしたまま、殆ど言葉を発してくれなかった。
その様子から、ハジメさんの身辺に何かあったのは明らかであった。
けど、今の私にはハジメさんの事を心配する余裕はなく、ただリュウヤに逢いたいという想いばかりが先走っていた。
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