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・再会
「お前、なんでココにいんだよ……」
いったい、何分程経ったのだろうか。
リュウヤは、私の頭を撫でたまま疲労感をにじませた声で言った。
「もうかまうな、って俺。
LINE送ったじゃねえかよ……」
胸元に顔をうずめたまま、私は左へ右へと二回、ゆっくりと首を振る。
「……いいの」
「俺に関わったら、お前が不幸になるだけだぞ」
私は、もう一度首を振る。
そして、顔をうずめたままリュウヤに対して言った。
「……かまわないよ」
私の背中を抱くリュウヤの左手に、力がこもった気がした。
長い抱擁だった。
私達二人は言葉を交わす代わりとして、ただお互いの身体を抱擁しあう事で応え合った。
「……なんで、北海道なんかに行こうと思ったの?」
互いの身体を抱擁し合ってしばらく経った後、私はリュウヤに尋ねてみた。
──逢いたくても、ずっと逢えなかった失望。
出会えた事で訪れた、歓喜。
複雑に絡み合った感情がひとしきり収まった後、私はようやくリュウヤに言葉を投げ掛ける事が出来た。
「……くるみが行きたいって言ってたからな、北海道」
リュウヤは、静かに答えた。
その声は、地元で「俺様キャラ」として君臨していた時のような自信に満ち溢れた声ではなく、虫の羽音のように寂しげな声だった。
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