1470人が本棚に入れています
本棚に追加
「ホントにそれだけの理由で、北海道に来たの……?」
私は、さらに尋ねた。
「……いや」
リュウヤは私から視線をそらし、言葉を濁した。
何となくだけど、言葉を濁した理由は察しがついた。
おそらくリュウヤは、それを私に言いたくないが為に言葉を濁したのだろう。
「なんで、なの……?」
けど、私は重ねて尋ねる。
──行方をくらますように、北海道へと消えた真相。
くるみさんが亡くなり、抱き合ったあの夜にリュウヤの全てを好きと言った以上、それは是が非でも私は訊かねばならないと思ったからだ。
「……死のうと思った」
──やっぱり。
リュウヤの答えを聞いた後、私は首肯したい気分になった。
リュウヤの言ったそれは、私が最後まで頭から消し去りたかった可能性だが、やはりリュウヤは自身の命を絶つ事を考えていたのだ。
くるみさんが行きたいと願い、そして来る事の出来なかった北海道。
そこでリュウヤは、自身の「生」を終わらせようとしていたとは。
「お前には、悪かったと思ってるよ……」
私にではなく、まるで独り言でも呟くようにリュウヤは言う。
その言葉を吐いたリュウヤの目は、この上なく力ない目をしていた。
「けど、俺にはこれが最適な方法だと思ったんだ」
リュウヤは述べると、淡々とした口調で続きを語った。
長くなりそうな感じであった。
私と、そして傍らにいるハジメさんは口を閉ざしたまま、ただリュウヤの語る言葉に耳を傾けた。
最初のコメントを投稿しよう!