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「けどよ……」
リュウヤは口を開くが、言葉を続けて述べようとせず、私の視線をかわして天を見上げた。
泣くのをこらえているのか、リュウヤの発したその声は震えており、新聞紙越しに発せられたかのようにしわがれていた。
「……けど」
リュウヤは切り出すが、やはり言葉を続けて述べる事が出来ず、ごまかすように咳払いをする。
私は黙ったまま、リュウヤから吐かれる言葉を待った。
「……けど、お前から次々に送られてくるLINE。
それ見てたら、死ぬのが怖くなってきたんだよ。
あれ程、固く決意したっていうのによ……」
一分程、間を置いた後、リュウヤはようやく胸中に秘めた核心を述べた。
目尻には抑える事が出来なかった涙が、決壊寸前のダムのごとく溜まりきっている。
「目を閉じると、お前の顔が亡霊みたいに浮かんでくんだよ。
悲しそうな顔でこっち見て、『死ぬな』って無言で訴えてきてよ。
俺、お前には悪いけど、頭、振りまくってお前のその残像を必死で振り払おうとしたよ。
せっかく、決意したんだ。
邪魔しないでくれ、ってよ。
だから、お前のLINEもマトモに見る事が出来なかったよ。
けどお前、俺が既読スルーしまくってんのに諦めずにバンバンLINE送ってくるし、徐々にこっちに近付いてきてるってのを知ったら、もう自分でもどうしたらいいか分からなくなってきたんだよ……。
自分が生きたいのか死にたいのか、一体どっちなのかがよ」
ふぅ、と息を吐き、目尻に溜まった涙を掌で拭うと、リュウヤは続けて述べた。
「だから、俺はココに来たんだ。
何もかもを、全部ココに捨てるつもりでよ……。
くるみが行けるものなら是非とも行きたい、って言ってた摩周湖で身投げする気でよ。
けど……」
言葉の代わりとして、深々と長いため息を吐くリュウヤ。
「けど?」
言葉が途切れ、私が再びリュウヤを促したその時だ。
「めぐみちゃんがココに来ていたから、身投げする事が出来なかったんだろ?」
今まで黙り込んだまま私とリュウヤのやり取りを見ていたハジメさんが、不意に口を開いた。
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