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「俺、さっきから名前が出ている、くるみって子に関しても殆ど知らないしね。
確か、ミスチルの『くるみ』が好きで、死ぬ間際までその曲を聴いていた、ってくらいの知識しか無いよ。
まっ、その子がリュウヤ君にとって大切な人だというのは、めぐみちゃんの感じや君が話す口ぶりからヒシヒシと伝わってきたけどね」
「だったら、アンタに何がわかるんだよ!」
リュウヤは、再び吠えた。
ハジメさんは涼しい顔をしたまま、リュウヤの咆哮をただ黙って受け流している。
「くるみの為に、俺は自分殺して、精一杯アイツの為に生きてきたんだよ!
その、くるみが努力の甲斐なく死んで、何の為に自分が生きてきたか見失ってるトコなのに……!
なのに、アンタ!
何、知った風な口きいて」
「リュウヤ君」
声枯らし言い放つリュウヤの咆哮を、ハジメさんは淡々とした口調で遮った。
「くるみって子が、君にとってどれ程の存在だったか、ってのは俺には分かりかねるけど、君がその子をとても大切にしていた、って事は何となく理解できたよ」
リュウヤはその出方をうかがうように、ハジメさんをじっと見据える。
「その、くるみって子が亡くなって君が、
『生きる意味を無くした』
っていう言葉の意味も、漠然とだけど理解できたよ。
けどね……」
ハジメさんは顎を引くと、真摯な眼差しをリュウヤに対して向けた。
「けどね、めぐみちゃんは一体どうなるんだい?」
言い淀む事なく、ハッキリとした口調でハジメさんは言い放った。
さっきまで熱気を帯びていた場はすっかりと静まり返り、秋の虫達がこの私達の沈黙を埋めるように、雑然としながらもどこか心地よいハーモニーを楽しげに奏でていた。
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