・生きるんだよ

3/8
前へ
/446ページ
次へ
「取り敢えず、君の言い分を聞いた上で言わせてもらうけど、ちょっと自分勝手すぎないかな?」 ハジメさんは先程の真摯な眼差しをリュウヤに向けたまま、言葉を続けていった。 「自分勝手……?」 「あぁ」 ハジメさんは頷くと、続けて述べる。 「いかにも、めぐみちゃんの事を考えたつもりになって『死ぬ』なんて言ってたけど、肝心のめぐみちゃんの気持ちを、君は一切考えなかったのかい?」 「……めぐみの気持ち?」 ハジメさんの問い掛けに、リュウヤは眉を寄せた。 「そうだよ」 ハジメさんは視線をリュウヤから私へと、ゆっくりと移す。 「君にとって、くるみってお姉さんは確かに『かけがえのない人』だったのかもしれない。 けどね、君もめぐみちゃんにとって『かけがえのない人』だって想われているんだよ」 「……………」 「めぐみちゃんが君の部屋で見たガイドブックだけを頼りに、北海道に来た意味。 それをもう少し、汲み取ってやれよ」 ハジメさんの言葉の後、リュウヤは無言のまま、力ない目で私を見つめた。 「君に逢いたい。 ただ、その一心だけでめぐみちゃん。 僅かな金とリュックだけで北海道にやって来て、行き交う人、一人一人に君の事を訊きあたっていってたんだよ。 頼りになるモノは、君の写真だけっていうのにね。 それが、どんなにつらく大変な事か、君に理解できるかい?」 「………………」 「ましてや、めぐみちゃんは女の子だ。 君の事で頭がいっぱいになってたのかもしれないけど、夜の『すすきの』で聞き込みをしている様。 正直、見ていて危なっかしい事、この上なかったよ。 あんな事してたら変なのに捕まって、身も心もボロボロにされんぞあの子、って」
/446ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1470人が本棚に入れています
本棚に追加