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「取り敢えず、君の言い分を聞いた上で言わせてもらうけど、ちょっと自分勝手すぎないかな?」
ハジメさんは先程の真摯な眼差しをリュウヤに向けたまま、言葉を続けていった。
「自分勝手……?」
「あぁ」
ハジメさんは頷くと、続けて述べる。
「いかにも、めぐみちゃんの事を考えたつもりになって『死ぬ』なんて言ってたけど、肝心のめぐみちゃんの気持ちを、君は一切考えなかったのかい?」
「……めぐみの気持ち?」
ハジメさんの問い掛けに、リュウヤは眉を寄せた。
「そうだよ」
ハジメさんは視線をリュウヤから私へと、ゆっくりと移す。
「君にとって、くるみってお姉さんは確かに『かけがえのない人』だったのかもしれない。
けどね、君もめぐみちゃんにとって『かけがえのない人』だって想われているんだよ」
「……………」
「めぐみちゃんが君の部屋で見たガイドブックだけを頼りに、北海道に来た意味。
それをもう少し、汲み取ってやれよ」
ハジメさんの言葉の後、リュウヤは無言のまま、力ない目で私を見つめた。
「君に逢いたい。
ただ、その一心だけでめぐみちゃん。
僅かな金とリュックだけで北海道にやって来て、行き交う人、一人一人に君の事を訊きあたっていってたんだよ。
頼りになるモノは、君の写真だけっていうのにね。
それが、どんなにつらく大変な事か、君に理解できるかい?」
「………………」
「ましてや、めぐみちゃんは女の子だ。
君の事で頭がいっぱいになってたのかもしれないけど、夜の『すすきの』で聞き込みをしている様。
正直、見ていて危なっかしい事、この上なかったよ。
あんな事してたら変なのに捕まって、身も心もボロボロにされんぞあの子、って」
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