・立花センパイ

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授業中も、私は殆ど上の空だった。 大好きな数学も、私の耳には全くと言っていい程入ってこず、頭の中は昨日見た井上さんと謎の男が行っていた“あの光景”で一杯だった。 「ねむ……」 襲い来る睡魔にも耐え、迎えた昼休み。 千夏と一緒に購買部にパンを買いに行くと、私は井上さんとすれ違った。 「井上さん……?」 瞬時にして眠気がふっ飛んだ私は、千夏に「ごめん!」と一言告げると、急いで井上さんの元へと駆け寄っていく。 サンドウィッチ片手に、一人教室へ帰ろうとしていた井上さんは私の顔を見るなり「えっ、何?」と、怯えきった様子で訊いてきた。 そりゃ、そうだ。 額に汗吹き出させて、目を血走らせて人が駆け寄ってきたら、誰でもこういう反応するわな。 「えーと……」 井上さんに駆け寄ったものの、私は言葉に詰まった。 まさか、ストレートに 「昨日、教室でHしてたよね?」 なんて、訊く訳にもいくまい。
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