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セピアな空白
彼とあの子がいなくなってからの数か月、
どうしていたのか、私はよく覚えていない
私は、彼が好きだったんだ
ひとりになったあと
残された写真をみて、私はそのことに、やっと気づいた
それから、ようやく外に出られるようになった
彼は、あの子は、どうしているだろうか
仕事帰り、夕飯の買い出しをしながら、どうしても思い出してしまう
ひとりで部屋に帰って、ひとりで食卓につく
この繰り返しにも、だいぶ慣れてきた
今は、あの日のことを申し訳ないとも思う
ピンポーン
彼とあの子と出会ってから、6年が経つある日、
寂しいひとり暮らしの部屋の前、誰かが、秋の夕暮れを揺らす音がした
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