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外れた音
「あの子がいなくなったの」
背をむけて、出ていこうとする彼の服をつかんで
嘘をついた
そうすれば、私をみてくれると思ったから
彼があの子を、どれだけ大切にしているか、知っていたから
利用した
汚い、重い、
なんと思われようと、どうでもよかった
それで彼が、ここに留まってくれるのなら
「いつ?」
案の定、彼は血相を変えて、ふりかえった
「わかんない、気づいたらいなかったの」
「一緒に探してくれ、頼む」
「うん、向こう探してくるね」
「ありがとう」
彼に背をむけた私は、
無意識のうちに、笑みを浮かべていた
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