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あの子が、いなくなった。
――いつかこんな日が来ることは、わかっていた。あの子の髪が白くなり、顔に皺が増えるにつれ、覚悟しておかねば、とは思っていたはずなのだ。
それなのに……いざ逝ってしまわれると、涙が止まらなかった。
なぜ、なぜ……ヒトとエルフの寿命はこんなにも違うのだろう。あの子の寿命が私と同じくらいだったらよかったのに。いや、私の寿命がヒトと同じくらいでもよかった。
……いっそ、自ら命を絶とうか。故郷の森を焼かれた私には、死んで悲しんでくれる家族もいないのだから……。
――いや、駄目だ。
なにもかも失くし、森を幽鬼のように彷徨っていた私に、あの子は生きろと言ってくれた。そう言ってくれたからこそ、私たちは友人になれたのだ。
そうだ、自ら死を選んではいけない。そんなことをしたら、私とあの子は友達ではなくなってしまう。
……いつかは、ずっと先にはなるだろうけれど、いつかは。必ずあの子のもとへ逝く日が来る。その日までは、生きなくては。精いっぱい、生きなくては。
――だから、いまはさようなら。我が親友。たくさんのものをくれた人。
あなたとの出会いは、宝物。
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