- epilogue -『日常』

4/9
426人が本棚に入れています
本棚に追加
/160ページ
「ひゃく、、、 199万、だとぉ?  てんめぇぇ、、、 1ヶ月でこんなに買物しやがって! 俺は、大企業の社長でもなけりゃ株成金でもないんだぞっ」 何食わぬ顔のキセは新たに開封した箱から最新型のモニターとキーボードを取り出し、 「クレジットカードがなければ『ジャングル』でのアカウント登録ができないのです。 僕は戸籍上、死んだことになってるのでカードが作れません。 ですが仕事で必要な品はネットで買った方が安く、いろいろ比較できるのです。 水無月さん、何とかなりませんか? 現金でしたら研究所名義で作ってもらった僕専用の口座にあるのですから」 キセは壁に掛けたサコッシュから通帳を取り出し、渡してきた。 「、、、、だったら一言えってんだよっ、お前にはコミュニケーション能力ってもんがないのか?」 「以前の水無月さんは怒ってばかりで相談などできなかったのです。 コミュニケーション能力云々(うんぬん)と言うならばそれはお互い様かと、、、」 「なんだと?」 「いえ」 生意気にも 尖る口元を睨むと、膨れっ面は相変わらず反省など微塵も見せずに目を逸らす。 しかし、、、 考えてみれば無戸籍で社会に出たばかりのキセにはカードもなく、ロクに稼ぎもないのは当たり前だった。 決して少額ではないISPの経費を立て替えさせる、というのも(こく)と言えば(こく)ではある。 それに、確かにキセの言う通り、少し前までの俺の態度も(ひど)かったのは確かだ。 「ま、、、そうだな。 そう言うことであれば俺のアカウントでの買い物は良しとしてやろう。 経費は俺が精算しておく。 この通帳は大切にしまっとけ。 無駄遣いしないでちゃんと貯めるんだぞ」 指に挟んで返すと、 「貯まっては いるのです。 ですので、これは水無月さんに、、、」 今度は通帳を開いて押し付けてきた。 「俺は貧乏人から金は取らない主義だ」 「いえ、お金はたくさん(・・・・)あるのです。本当です」 「ははははは、、、『たくさん』か。 可愛い奴だな」 鼻で笑いつつ、目の前に差し出されたページに並ぶ数字を見てやった。 「、、、、」 「、、、、」
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!