- epilogue -『日常』

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◇変化 朝、 コンコンコン、、、 セキュリティの済んだドアがノックされ、 水無月が迎えると九織が立っていた。 「九織か」 「うわっ、裸にはだけたシャツ!  初夜明け、生々し、、、」 九織の後ろに立っていた鵜飼も顔を覗かせ、 「『ジャングル』から山ほど荷物が届いてるぞ。 それに九織の奴がキセくんのこと気になるらしくてな、荷物運びがてら連れて来た」 脇につけた台車から段ボールを持ち上げ、九織を越して部屋に入ってきた。 「キセくんは?」 「まだ寝てる」 胸をはだけさせたまま、フロア奥に戻った水無月は、カウンターに並べられた果物やシリアル、厚切りのトースト、調理用ボール一杯のヨーグルト、やや焦げぎみの潰れた数枚の目玉焼きに山盛りのソーセージを乗せた大皿などをダイニングテーブルに移し、再びキッチンに入った。 「うそ、、、うそうそっ水無月さんがっ、 水無月さんが料理してるぅっ?」 「あいつの朝飯くらいはな」 「朝飯ぃ? もう昼だぞぉ、、、」 水無月が送る視線の先、ロフトからは、 『すぴぃ~、ぐぅ~、うにゃ、ふぴぃ~』 幸せそうなキセの寝息が聞こえていた。 「疲れてんだろ。 でもまぁ、おかげで俺は初めて奴の寝言相手せずに朝まで過ごせたけどな」 「『疲れてる』だって!『朝まで』だって! わっあぁぁ、、、」 染めた頬を自らの両手に包んだ九織が、 嬉しそうに目を閉じた。 「九織。今後はあいつに変な知恵つけんなよ。 変な下着もゴムだのも余計な世話だ」 静かに伝えるものの、レタスを切る手を止め、ナイフの先を九織に向けて ゆらゆらと揺らす。 ぱっと目を開けた九織はテーブルに手を着いて身を乗り出した。 「ええっ、もしかして水無月さん、キセくんに持たせたコンドーム使ってあげなかったの?」 「俺のやり方に慣らす」 水無月はカウンターにグラスを置き、鮮やかな色をした液体を注ぐとロフトに向かって怒鳴った。 「おいっ、キセッ。 飯だぞっ、さっさと起きろっ」 「わー、、、。 ゴム着けないなんてひくぅ。 すっごい勝手。 中に出されると後が大変なのに、、、」 「けどなぁ、、、こいつが人の為に飯作るなんてのはあり得ない光景だぞ? それに独占欲が強い男ほど自分のニオイ付けたがるって言うし、、、。 こりゃ、キセくんに相当骨抜かれたかな、、、」 「っせぇなっ、てめぇら二人して下世話なんだよっ。 用が済んだらとっとと帰れっ!」
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