- epilogue -『日常』

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「おい、キセ」 「はい」 「この数字は何だ」 「僕の貯金額です。 研究所のお父さん(・・・・)が、自分で管理しなさいと口座を作ってくれたのです。 内訳としてはですね、 新型テロメラーゼ酵素による利益と 培養に関する権利収入。 研究所時代に取得した特許利用料、 それからISPの特別報酬など、、、」 「十三億六千万が、か?」 「これからも毎月貯まっていきます。 ですが僕はジャングル以外、他で使う機会もありませんので水無月さんが使って下さい」 思いもよらぬ収入格差を突き付けられつつも俺は局長ばりの威厳で椅子を引き、平静を保ちつつ座った。 「そうか。 しかし俺だってお前一人抱えたとして金に困るわけではない。 だからそれはそれで置いておけ。 俺のカードについては上限額が設定されていない。 故にお前は安心して俺のアカウントを使い続けていい」 「ですが困ったことになってるのです」 キセはローヤルゼリーの瓶片手に 膝に乗って来ると、 「ジャングルさんと僕とは、こんなにも親しく売買してますのに、毎回、 『ようこそ、水無月(・・・)さん』 と画面に出て来るのです」 「だろうな。 何故ならそれは俺のアカウントだからだ」 「ですのでついに今朝、サイトに侵入して 『ようこそ、キセくん!』 と書き換えたのです。 そうしましたら、直後 『あなたのアカウントは、不正アクセスの可能性があり閉鎖されました』となり、 ログインできなくなってしまいました。 全く困ったものです。 まだまだ何かと入り用ですのに」 首をひねって俺を見上げた。
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