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「中央情報部のガードは固い。
ISPは一言で言えば国益を損するものの特定と排除、及び国に付与する機密を守る為に設立された組織らしいが、
総人数も知らされていない上、他にセクションがあるのかもわからない。
各省庁や世間にも存在を公表せず、かかる膨大な予算の出所、用途などの詳細情報も一切明らかにしていない。
つまり何もかもが秘密裏になされている、と言うことだ」
言って柏木もグラスを傾けた。
「窓口が警察庁トップの長官でなく局長ってとこも気になるが、それ以上に
『見えないものに雇われ』てるってのが気に入らないな」
「警視庁に閉じ込められていない分、お前には向いてるんじゃないか?」
デスクに置かれたPCモニターの画面上には次々と海外からの報告書などが入って来るらしく、それらに目を通しつつも可笑しそうに笑い、柏木はポケットから個人のスマホを取り出し、耳に充てた。
『汰士か? マンションに着いてるなら連絡を寄越せと言っただろ』
突然仕事モードを離れて、恋人の心配をする柏木に水無月は毎回呆れる。
『よく厚労省が拾った』
と言った局長の言葉は、柏木聡が育った家庭環境を知ってのものだったのだろうが、警察庁が門を閉ざしたにも関わらず、こういうマルチな聡の適性を見抜いて受け入れた厚労省には、やはり局長クラスの目利きがいたのだ。
柏木が通話を終えるのを待って立ち上がった水無月は、
「俺は『キセを養育してきた研究所』と『ISP』には何らかの繋がりがあるとみている。
裏がとれたら連絡するが、そっちが得た情報も逐一寄越してくれ」
スマホをポケットにしまいながら言った。
「帰るなら送らせるが?」
「いや、いい。
悪いが車だけ置かせてくれ」
「そういえば浩一、キセ君は今どうしてる?」
「自宅で花園街の詳細地図を作らせてる。
それくらいだろ、あのポンコツにできんのは」
「ちゃんと面倒みてやれよ。
日中も連絡くらいは入れてるんだろうな?」
「まさか。
用も無いのにかけて来やがるから着拒にしてるぐらいだ」
水無月はグラスを取って残りを煽り、身を屈めてテーブルに置いた。
「心配じゃないのか?」
「心配?
は、、、冗談はやめてくれ。
俺は毎晩あの部屋に戻る度、
『あいつがいなくなってりゃいい』と心底思ってるのに」
柏木らしいセリフに一瞬は嘲笑ったものの、すぐに真顔に戻った水無月は速足でその場を離れた。
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