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ノックもせず大きな音を立ててドアを開け放ち、正面で顔を上げた上司とその脇に立つ、柏木 聡を睨み据え舌打ちをした後、大股で彼らの前に歩み進んだ。
「水無月、ここは局長室だぞ。
入室の許可を得てから入って来い」
水無月を咎めて前に出た柏木を、椅子に座る上司の刑事局長がやんわりと制した。
「いいの、いいの、柏木君。
うちの水無月はいいの」
言って、人一人を担いで来た割には息一つ切らさない水無月を見つめ、得意の『怒りに気付かぬ笑顔』で迎えた。
「水無月。
担いでるそれ、キセくん?」
「他に誰がいる」
水無月は、少しでも気を許せば、
『てめぇ』
くらいの言葉をうっかり吐きそうになるのを堪え、肩に乗せた人物を降ろしてから局長へと突き出すと前屈みに低く唸った。
不機嫌に輪をかけている理由はキセの他にもあった。
厚労省の麻薬取締部に所属する親友の柏木が場違いにも局長の隣に控え、この様子を静観していることだ。
─ 聡がここにいるってことは、、、
「、、、臭うな。何かあるだろ?」
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