李子  ─ リーヅィ ─

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「これ、メールに添付されていたリンク先の和訳です」 李子は手にしていたタブレットの画面を指さした。 「助かる」 李子の横に座った水無月は彼の頭を撫で、すぐさまポケットから個人のスマホを出し、タブレットからぶら下がるケーブルに繋いでデーターを移しにかかった。 「遺伝子操作に関する記述なんですね。 見慣れない単語がいっぱいありました」 言いながら李子は水無月のシャツのボタンを外し始める。 水無月がベッドヘッドに重ねたクッションに身体を預け、タブレットを掲げてスクロールするその胸へ、李子は唇より先に白い頬を合わせた。 「シャワーくらい浴びさせろ」 李子の背中を撫でつつ、同じ手は時折スッと離れて画面上を滑る。 「コウさんが読み終えるまで」 李子に訳させたアメリカのギフテッド研究所もその概要は大したことない。 しかし特異体質の子供たちを集め、テロメアと呼ばれる長寿に関わる遺伝子を研究しているという一行にふと目が留まり、さらにリンク先を探った。 胸に寄せる小さな顔を上に向かせ、 「李子、次来るまでにもう一つ二つ訳して欲しい資料があるんだが」 データー転送を終えた水無月はコードを外し、タブレットと自身のスマホを脇に置きながら李子の頬を親指で辿った。 「はい」 李子は嬉しそうに、しかし水無月がポケットから札を出して渡す手をやんわりと止め、首を振る。 「仕事をしたんだ、受け取れ」 「僕の仕事は男娼ですから。 決まった額を。終わった後で」 「他に客も来ないくせに」 わざと笑ってやると少年は恥ずかしそうに頬を染めて頷き、身体を起こして水無月のベルトを外した。 『腰を上げて下さい』 と視線で合図を送ったが、水無月は下腹に顔を埋めようとする李子の頭を軽く押さえて止め、シャワーを浴びに立った。
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