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里佳子は子供のころからの夢を話した。
「女子にありがちだけどやっぱりお姫様になりたかったな。もちろんハッピーエンドで末永く暮らしましたってお姫様ね」
「なりたいものって考えたことなかったな」
「でしょうね」
「里佳子はお姫様、あってるよ」
「まあね。直樹は王子様じゃなくて騎士だったのかもね。よく言うこと聞いてくれたし」
「騎士の乗る馬じゃないのか」
二人で笑った。
「でも、やりたいことが見つかってよかったね。直樹にもそういうのがあったなんてちょっと驚き」
「うん。自分でもそう思う」
「私はやっぱり家の中を綺麗に整えて素敵な旦那様を毎日出迎えたいのよね。仕事が嫌いじゃないけど家で待ってたいのよ。なにか、じっくり煮込みながら」
「ああ、なんかよく似合ってるよ」
ぐつぐつと大きな鍋でシチューを煮込む里佳子は容易に想像することができた。
「うち公務員でちゃんとしてたけど共働きだったから家に誰もいなくて寂しかったのよね」
今更ながらに里佳子のきちんと躾けられた態度と、自分よりも家族を優先させる気持ちに納得がいった。
「なんか眠くなってきちゃった。寝るね。おやすみ」
「おやすみ」
頭は冴えていたが目を閉じて自然に眠りが訪れるのを待つことにした。
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