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僕の記憶障害は2度目だったのだ。一度目は、美香が死んだとき。
そのこともすべて僕は思い出した。
交通事故で美香が車と衝突し、駆け付けた時にはもう遅かった。
その状況を見て、僕は現実を受け止めきれず逃げて、自分の記憶を封印してしまっていたのだ。
でも今やっと向き合うことができた。
僕は何年もかけて、やっと現実を受け止めることができたんだ。
逃げ出した僕を見て美香はどう思ったのだろうか。
心配してくれてたのかな?
こんなんじゃ、死ぬに死にきれないよね。
美香、ごめんね。もう大丈夫だからね。
そして僕は美香の両親へあいさつにいき、線香をあげに行った。
インターホンを鳴らし、弱々しい声で返事があり、僕は自分の名前を名乗った。
すると美香のお母さんがでてきて、僕を迎え入れてくれた。
そして美香の部屋へと案内してくれた。
美香の部屋は今も使われているんじゃないかっていうくらいに綺麗だった。
毎日掃除がされているんだろう。
美香の両親は泣きながら、やっと来てくれたね、ありがとうと何度も頭を下げていた。
僕はありがとうと言われる立場でもなんでもなかった。
あのとき逃げ出してしまってごめんなさい。
僕は心の中で謝罪をした。
そして帰り道、僕は彼女にラインをした。
「美香、ありがとう。
僕はこれからもずっと美香のことを好きだし、もう忘れないからね。
君が生きていなくても、僕の心の中に美香はずっといるんだよ。」
でもいつかまた会えるのかも。
僕の彼女へのラインは、これからも続く。
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