――逢魔が時に迷う――

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 ぐずる戸波へ若干ばつが悪そうに告げ、渋沢が自分たちの歩く獣道の前方を顎でしゃくった。  その言葉に反応し、俺は自分のスマホを確認する。  道に迷い(しばら)く歩いてから気がついたことなのだが、何故か電波が届いておらず圏外を表示してしまっていた。  全くと言って良いくらいに単純な道であったはずなのに帰路を見失い、挙げ句行きは問題がなかったスマホの電波も完全に圏外。  どちらへ進めば人のいる場所へ出られるのかもわからなくなりながらさまよい、いつしか獣道にまで迷い込んだ。  これでは戸波が弱音を吐くのも理解できるが、だからと言ってここに立ち続けていても事態は何も改善しない。 「渋沢の言う通りだ。我慢して、もう少し歩いてみよう」 「……うん」  少しでも励ませられたらと、なるべく軽い調子で告げた俺の言葉に、戸波は渋々といった感満載で頷いた。  後三十分もすれば、足元は闇に侵食されてしまう。  そうなる前に、なんとか落ち着ける場所くらいは確保しなくては。
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