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最悪の場合、野生の獣に襲われる危険だって高まってしまう。
内心不安が募るのを顔に出さぬよう努めながら歩みを再開すると、暫くして突然渋沢が「そう言えば……」と、下げていた顎を僅かに上げて呟きをこぼしてきた。
「どうしたんだ?」
黙って歩くのも気が滅入るため、俺は惰性のようなノリでその呟きを拾った。
「いや、今ふと思い出したんだけどよ。中野って覚えてるか? 高校のときに同じクラスだった、あの眼鏡かけてた奴」
「中野……? ああ、いたな。あんまり話したことはないけど」
大して仲が良かったわけでもない男子の顔をおぼろ気に脳内へ浮かばせながら俺が頷くと、渋沢は口元をニヤリとさせ話を続けてきた。
「あいつとはオレもそんな仲良くはなかったけど、一度教室で二人きりになったタイミングがあってよ、そんときに変な話聞かせてもらったんだよ。それ思いだした」
「変な話? 何だよそれ」
「まぁ、変なって言うか、普通に怪談だな。あいつ、小学生の頃家族で海に出かけてさ、そこで幽霊見たって」
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